さて、信長公の壮大なアジア征服計画を聞いた光秀と家康。
翌日、二人だけでの密談で語る内容で、天下は、ガラリとひっくり返る!
光秀と家康二人の密談
光秀:家康殿、信長公の計画、どう思われる?儂は、無理な話と思うたが。
家康、そのことよ。光秀殿、わしのような三河の田舎者には、話が大きすぎてよう分からぬ。儂や家臣が、考えるのは、いつも三河や遠江のことよ。京に上ったことさえ、ほとんどないのに、唐や天竺と言われてもついていけぬわ。
終わらぬ戦に嘆く二人
光秀:そう思われますか。拙者も、信長様の天下布武という旗の元に、何年も心を鬼にして戦って参った。いくたの家臣や領民を死なせてきたか分からぬほどじゃ。自らの手で殺めた武者も数え切れぬ。もう少しで、天下は統一されて、平和な世の中が来ると思うたのに、まだ戦を続けるかと思うと・・・。儂ももう66歳。無理は利かぬ年。海を渡って戦をするなどまっぴらじゃ。
家康:それならば、上様をお諌めするわけには参らぬのか。信頼厚き光秀殿の話なら、上様も聞き入れてくださるのでは。もし、助っ人が必要なら、儂もともに申し上げるが。
光秀:それがのう。近頃は、儂の話を聞き入れてくださらぬ。しかも、つい、先日、長宗我部攻めをお止めくださいと言上して、はねつけられたばかり。さらに、諫言してもやぶ蛇になりそうじゃわい。しかし、それも今回のことで、理由がよう分かった。
蜜月だった信長と光秀のすれ違い
日本だけで、戦を終わらせたい儂と、大陸まで攻め込みたい上様とでは、根本的に考え方が違ってきたのだ。そうと分かれば、上様の意に従うのが家臣の努めかもしれぬが、儂は、やりとうない。
信長の野望:大志
家康:むう、明智殿でそうであるか。他に上様の意志を変えられる者はおらぬのか。柴田殿、秀吉殿や村井殿はいかがか。
光秀;難しいであろうな。確かに、秀吉は、上様に物申せる数少ない男。叱られてもくじけず、思う事をズバッと言う。しかし、あやつは、小さいことでは、逆らうが、大きなことは、言う通りにする。上様の根本的な方針に逆らうようなことはすまい。ましてや、柴田や村井殿は、上様の言いなりじゃ。
徳川殿。最近、上様のお気に入りは、変わってのう。佐久間信盛殿が追放されたのはご存じかと思うが。儂や秀吉・柴田殿よりも、蘭丸や堀秀政といった若い者、堺や博多の商人を好まれる。奴らの若さや勢いが上様のお気持ちに沿うのであろう。
もし、蘭丸や秀政に、命じれば、喜んで、唐や天竺に攻め込んで、手柄をあげようとするであろうからな。
家康:それでは、上様の言う通りにするしかございませぬのか。戦のない世の中が来ることを望んで、我らは戦をしてきた。死んでいった家臣達に、もう少しじゃ・・・もう少しで戦のない世が来ると言い続けた。そのために、多くの家臣に死んでくれと命じてきた。あの世で、家臣や領民に顔をあわせて、どう謝ればいいのか。
謀反を切り出す光秀
光秀:徳川殿。そなたとは、古くからの知り合いじゃ。何度も同じ戦で、同じ飯を食った仲じゃ。それを見込んで、腹を割って話したい。よろしいか
家康:何でも話してくだされい。ここは、二人きり。少し離れたところで、忍びの半蔵自ら警護しているだけじゃ。
光秀:ならば言おう。儂の覚悟を。すなわち、上様をお討ち奉るという方法がある。
徳川殿の接待が終われば、上様は、京都で本能寺に泊まることになっている。しかも警護の兵はわずか。さらに、幸いなことに、長子の信忠公も妙覚寺にいるのだ。もし、二人揃って、討ち果たせば、織田家の天下は終わりじゃ。上様を討つことだけに限れば、勝算はある。
家康:な・・・なんと・・・それは、
光秀:なに・・・戯言よ・・・忘れてくだされい。
家康:そうは思いませぬ。しかし・・・やるしかないかもしれませんな。
光秀:まことか。ならば、力を貸してくれい。けっして、儂が天下を取るという私欲ではない。ただ、子々孫々に戦のない平和な世を残してやりたいのだ。わしももう若くはない。天下を抑えるだけの気力・体力はない。家康殿が力を貸してくれるなら、天下はそなたが治めてくだされば結構。
家康:天下など拙者もごめんこうむる。それはさておき、光秀殿。勝算を聞かせてくだされ。味方はいかほどに、上様を討つ大義名分はどうするのだ。
光秀:今なら、上様は、わしを信頼している様子。京の北方面の警備は、明智軍に任されておる。それゆえ、上様を討つのは容易い。問題はその後だ。儂の味方になりそうな武将は・・・
縁戚でもある丹後の細川は固い。それに、大和の筒井。近江の小大名達は、勝ち馬に乗るだろう。畿内の足利家ゆかりの武将達も従ってくれるはず。これに、駿遠三の徳川殿が加われば、近畿と東海を抑えることができる。
敵になりそうなのは、摂津の丹羽長秀&織田信孝、伊勢の織田信雄、美濃の織田信忠家臣。強敵になりそうなのは、北陸の柴田、上野の滝川、中国の羽柴。しかし、あやつらは、敵を抱えて動けまい。その間に、信孝と信雄兄弟を倒してしまえば良い。もし、朝廷に認めてもらえれば、羽柴や柴田と和解もできるやもしれぬ。