花鳥の夢:狩野永徳は、山本兼一氏自身の命が込められた美世界

戦国時代、安土城・大坂城をはじめとした城や寺社・屋敷を彩った天才絵師「狩野永徳」。彼を描いた傑作小説が、山本兼一氏の「花鳥の夢」。

歴史や芸術に興味がない人でも楽しめる一大傑作です。ただし、軽い物語ではありません。山本兼一さんが、精魂込めて書き上げたこの傑作小説は、読む者の魂を掴んでしまいます。読んでいる間は、永徳の苦悩に引き込まれてしまいます。狩野一門を背負い、天才と言われた絵師は、軽やかに筆を振るう天才肌とは違い、苦悩する努力家として描かれています。一門を背負う責任・凡庸な父への反発・新たな絵への挑戦、一つ一つに苦悩します。幼い頃は、楽しかった絵を描くことが、いつしか苦しみとなってしまいます。

花鳥の夢:長谷川等伯とのライバル関係

そこに、ライバルとして、長谷川等伯が登場します。こちらは、永徳のようなバックグラウンドがない分、軽やかに絵筆を振るう天才肌。まるで、F1のアラン・プロストとアイルトン・セナのように、彼らはぶつかり合います。狩野一門に弟子入りした長谷川等伯を嫉妬に狂って破門する永徳の姿。等伯の絵を素直に褒められない姿。これぞライバルにふさわしい芸術の戦いでしょう。

唐獅子図屏風:宮内庁

  • 人の世には、花と夢がなければいけない。この世にそれをもたらすのが、征夷大将軍の仕事である。溢れんばかりの覇気を持った足利義輝に依頼された洛中洛外図。
  • 大きな絵を描くには何が必要だ。と織田信長に問われて、言葉に詰まった永徳。気宇の壮大さを知った安土城の梅。
  • これは俺だと剛毅な絵を描いた唐獅子図屏風。
  • 重苦しいと言われた檜図。

これが、檜図。今にもあるき出しそうな太さ・うねり・・・圧迫感を持った絵。

檜図

檜図屏風:e-国宝

絵の真髄をつかもうと必死に描き続ける永徳と限りある生命を燃やして書き続ける山本兼一さんが重なります。

絵の中に描く人物の想いや心まで描こうとする永徳に対して、こころは、観ている者にある。観ている者の遊ぶ場所さえなくすのかと言う父の松栄。凡庸だと思っていた父に絵の真髄を教えてもらった瞬間です。とはいえ、結局、凡庸な父として、永徳の心にある龍に責められることになるんですけどね。

端正であることこそが狩野の絵。それから見ると檜図は、端正を超えた新たな永徳の絵だと思います。

日本史上、屈指の華やかな時代だった安土桃山時代。信長や秀吉の城を彩った安土桃山文化の代表作。花と鳥の夢にしばし、戯れてみましょう。

そして、安土桃山時代に現れた二人の巨匠。狩野永徳と長谷川等伯。この二人をライバルとして見ると、さらに絵画の世界が広がると思います。

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