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武帝「劉徹」の成功体験から来る李広利将軍へのえこひいき
- 2020/9/4
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- 劉徹, 北方謙三, 武帝紀
歴史上、暴君と言われる人物は、たくさんいます。その中には、生まれながらの暴君もいれば、後天的に横暴になっていく人もいます。今回は、晩年、暴君と化した前漢の武帝「劉徹」について、ご紹介します。
漢帝国の皇帝として君臨した武帝「劉徹」。前漢の第7代皇帝として、帝国の最盛期を築き上げた名君。
前漢の武帝「劉徹」が暴君になるまで
ただ、若いころ、名君だった武帝は、治世が続くとだんだん、おかしくなっていきます。ついに、賢帝だった彼は、暴君と化してしまいます。司馬遷の宮刑や李陵の族滅をはじめ、多くの人々を罪に落とし、皇太子まで反乱をおこします。
北方謙三氏の書く史記武帝記を読んでみると、過去の成功体験を忘れられない武帝の悲哀を、これでもかと言わんばかりに、書き記しています。
若いころ、衛青という有能な将軍を育てて、領土を広げることに成功したあと、後継の将軍に恵まれず、戦に勝てなくなります。そこに現れたのが、衛青と似た境遇の李広利将軍。武帝は、たいした成果を上げていない彼を重用し、失敗しても許します。他の部下は許さないのに、彼だけは特別扱いするため、敵国からも暴君がいてくれてよかったと言われるくらいです。
李広利将軍へのえこひいき
李広利将軍のエピソードとして、書かれているのが、これ。李広利将軍が、遠く、大苑に遠征し、失敗したのに、ちょっとした罰を与えただけ。そして、次の遠征では、なんと、ろくに戦いもしないうちに、兵糧不足などを理由に、多くの兵が逃亡。何とか大宛と交渉し、3千頭の馬を得て帰ってくれば、それを大勝利と認めてしまう。
李広利将軍が優秀な将軍であってほしいという皇帝の意図をくんで、他もそれに合わせてしまうという最低な組織になってしまった前漢帝国。
「ものごとを直視しようとしなくなっている。自らを万能だと思えるだけのものを築きあげたがゆえに、わずかなほころびさえ見たくないと思う。思えば、周囲はそういうふうに扱うようになる」史記武帝記 第四巻
独裁者に逆らう人物は、消えてしまい、イエスマンだけが残った宮廷。間違っているといえる人は誰もいません。皇帝の気持ちを読むことだけに優れた人が、顔色を伺いながら発言する。そんな組織は、あちこちにありますよね。
成功した上司
成功した上司の元に、良い報告しかあがらなくなったら、危険レベルにあるとかんがえなければいけませんね。誰しも、怒られたくありませんし、失敗を報告したときに、罰を与えられるとわかっていれば、問題や失敗を隠して、水面下で片付けようとします。
特に、上司が、何もかも上手くいって当たり前。私は、優秀なんだから、失敗するはずがないと思い込んでいれば、大変。わずかな綻びさえ見ないふりで、そんなはずはないとミスを許さないオーラを発します。部下は、ミスや綻びを自分たちだけで処理したり隠したりして、悪い報告はあがらないまま、業績が悪化していきます。
もちろん、当には、自分がそんな状態になっているとは、夢にも思いません。そして、過去の成功体験と自分の態度が、部下に圧を与えているとも思いません。
もし、あなたが、部下のミスや失敗にイライラするようになれば、危険のサイン。ミスや失敗の報告に対し、よく、報告してくれたね。一緒に対応策を考えようかというように、自己をコントロールしないといけません。いつのまにか、あなたも武帝劉徹のような、暴君上司になっているかもしれませんよ。