茶道具の茶入として天下三茄子と言われる「九十九髪茄子・松本茄子・富士茄子」の一つが付藻茄子(九十九髪茄子)です。つくもなすと呼びます。
かの室町三代将軍、足利義満から義政そして、戦国の梟雄「松永久秀」が持っていた茶入です。その後、織田信長が上洛すると久秀は九十九髪茄子を献じて所領を安堵されました。しかし、謀反を繰り返し最後は名茶釜「平蜘蛛」を冥土の道連れに爆死。
足利義政は、政治面では最悪の将軍かもしれませんが、文化面では東山文化を開かせた超一流の文化人で、収集した名品は東山御物と呼ばれます。
出典:天下の茶道具、鑑定士・中島の眼
なんでも鑑定団で有名な中島誠之助氏による、戦国の茶人「古田織部のへうげもの」に出てくる名品を紹介した本が、2012年に発売されています。
大阪落城で破壊された九十九髪茄子
その後、織田信長はこの茶入を愛用したため、本能寺の変に出会ってしまいます。さらに燃え落ちた本能寺から掘り出され豊臣秀吉の所持品になったがために、大阪夏の陣で木っ端微塵になってしまいました。
ところが、大阪落城後に、九十九髪茄子の探索が行われ、塗師の藤重藤元・藤厳親子が、二度の探索の結果、破片を集めてふるい分けて修復するのです。
想像してみてください。あの広大な大阪城の中から小さな茶入の破片を探し出すのです。もちろん、ある程度の場所は推定できるとはいえ、気が遠くなりそうな作業です。
そして、この修復の見事さ、X線で見るとバラバラになった茶入が綺麗につなぎあわされているのが見えます。
こんなに綺麗に漆でつなぎ合わせるとは、その技量には驚嘆します。
金継ぎの技法
漆を使って欠けた陶磁器を修理する技法を金継ぎ・金繕いと呼びます。
金繕いの技 漆芸家 宮原隆岳氏の動画
この技も素晴らしいのですが、九十九髪の表面に継ぎ目がまったく見られないというのはどういう技術なのでしょうか。壊れた陶器の全ての破片を集めても粉のようになった部分が出てくるはずです。
九十九髪茄子の今
この九十九髪茄子は、東京世田谷区の静嘉堂文庫美術館に収められています。
静嘉堂は、岩﨑彌之助(1851~1908 彌太郎の弟、三菱第二代社長)と岩﨑小彌太(1879~1945 三菱第四代社長)の父子二代によって設立され、国宝7点、重要文化財83点を含む、およそ20万冊の古典籍(漢籍12万冊・和書8万冊)と6,500点の東洋古美術品を収蔵しています
へうげもの名品名席実見記:あの初花や黄金天目茶碗も紹介されています。
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